アートディレクター・植原亮輔 × オギー — 一生、猫と暮らしたい

Mar 7, 2013 / Interviews

photo:Shin Suzuki Edit&Text:Madoka Hattori

アートディレクターとして活躍するキギの植原亮輔さんは、スコティッシュフォールドの雄猫・OGHEE(オギー)さんとブリュッセルグリフォンの雌犬・66green(ロログリーン)さんと暮らしています。まさか猫や犬と暮らすことになるとは思ってもみなかったという植原さん。「悪人顔のおっさん」といいながらも愛情をたっぷり注いでいるオギーさんの魅力に迫ります。

—オギーさんとの出会いは?

「オギーは、野田凪ちゃんが飼っていた猫なんです。2005年くらいにに凪ちゃんがネットでみつけて、大阪のブリーダーさんから譲り受けました。何度か預かったりしていたのですが、凪ちゃんが他界したあと、08年頃から譲り受けて僕と一緒に暮らしています」

—もともと猫を飼っていたのですか?

「おばあちゃんが5匹くらい飼っていました。半分野良猫みたいなものでしたが。とはいえ僕自身、猫を飼う経験ははじめて。猫はいいですよね。犬は欲望がどんどん増していくので大変。何かひとつ甘えると要求がエスカレートしていく。猫はそういうことがないので楽チンです。2匹を飼う前、実は犬を飼っていました。飼い始めてしばらくして長期の出張があったので、実家に預けていたら親が溺愛してしまって。しかも犬がきたら夫婦喧嘩がなくなったというので、じゃあしょうがないかとしぶしぶ親に譲ったんです。それで1年後にひょんなことからロロを飼うことになりました」

—オギーさんはどんな性格ですか?

「耳も丸くて、変な猫だなと思っていたんです。男が嫌いらしくて、最初は全然触らせてくれなくて。何度か預かるようになって、ご飯をくれる人だと認識した途端、懐いてきたんです。いまでは寝ている時も必ず乗っかってきて、フミフミしたり。ロロも真似して乗っかってくるんだけど、オギーのほうがおとなしくていいですね。スコティッシュはおっとりしていて、本当にかわいい」

賢いオギーと天然なロロ

—オギーさんとロロさんは仲がいいのですか?

「しょっちゅう喧嘩していますよ。ロロの上に乗っかって猫パンチしたり。居間はオギー、ベッドルームはロロとご飯の場所もわけています。でも、本当は仲がいいのかもしれない。話せないからわかんないですよね(笑)。オギーのご飯はカリカリと缶詰のミックス。トイレは2層式で、粒が大きい砂を使っています。キャリーバッグはBOSEのスピーカーを入れていたものを代用しているのですが、メッシュと大きさがちょうどいいんです」

—オギーさんと暮らし始めて、発見はありましたか?

「オギーはめちゃくちゃ頭がいい。ある日、洗面台に血が付いていたんです。ヒゲを剃る時に、カミソリ負けしたのかなと思ったのですがどこも切れてなくて、それが2〜3日続いておかしいなと思っていたら、オギーが洗面台でじっとしていた。僕に体の不調を知らせようとして、白いシンクの上で用を足していたんです。病院へ連れて行ったら膀胱炎でした。砂のトイレだと気づかないから、洗面台にわざわざ登ってアピールしていたんです。すごいなと思って。またロロが僕に甘えたがっているのもわかっていて、自分が甘えたらすっといなくなってロロに譲るんです。自分の行動をわきまえている。大人ですね」

—植原さんは犬派だったのですか?

「犬派とか猫派とか、どちらでもなかったですね。そもそも動物を飼いたいという気持ちがあまりなかった。やっぱり動物を育てるのは大変じゃないですか。自分でも意外ですよ。なんで犬や猫を飼っているんだろうって時々思います。……独身だからですかね(笑)」

—では、オギーさんはどう思っていると思いますか?

「オギーは外に行きたいのかなって。いつも外を見ているから、ちょっと可哀想だなとは思います。しょうがないけれど、僕の生活に付き合ってくれている感じですかね。帰ってくると“何してたの?”ってニャーニャー怒っている。そこがまたかわいいんだよね。僕がそう思っているだけかもしれないけど。子どものような、おっさんのような。シェアメイトかな。ロロは娘だと思うとキケンなので、いとこくらいの感覚。犬は愛しすぎるとヤバイんですよ」

—ヤバイというのは植原さんが?

「僕もヤバイし、お互いにヤバイ!」

—まるで恋愛みたいですね(笑)。オギーさんは愛しすぎても大丈夫なんですか?

「うん。オギーはいくら愛してもプイッとどこかにいってしまう。だから大丈夫。ずっと、猫って女性のような生き物だと思っていたのですが、最近は犬のほうが女性なんだなと気がついたんですよね。どんどん甘えが増してくる感じが、犬にはあるじゃないですか。僕の個人的な経験かもしれないけど(笑)」

猫グッズの丸いデザイン

—植原さんの手がけられたお仕事でいえば、ウンナナクールのアップリケ「ニャンプリケ」はとても人気ですよね。

「猫のアップリケをつくったらいいと提案したのは僕ですが、実際は(渡邉)良重さんが描いたもの。最初は犬をつくりました。犬は犬種がさまざまなので、バリエーションも豊富。猫も同じく、猫種やポーズに変化をつけています。猫をデザインするときはキャラクターになりがちですが、飼い主さんが感情移入しやすいかなと思い、リアルなタッチで描くことにしました」

—デザイン面で、気になる猫グッズはありますか?

「気になるというか、猫用トイレのフォルムが嫌いなんです。なんで角が丸いものしかないんですかね。四角いトイレがあればいいのに、かつての日本車のデザインがどんどん丸くなっていったような気持ちの悪い感覚。ネットでみつけたのですが、唯一この『ケッシー』というブラシだけはデザインされているなと。猫じゃらしも、なんで先っぽに肉球とかデザインしてしまうのかなと思います。もっと普通のデザインの猫グッズがあればいいのにといつも思います」

犬っぽい人、猫っぽい人

「オギーの写真を撮るのが好きなんです。Instagramにアップしては楽しんでいて。政治家みたいな悪人顔のおっさんに撮れることもあるし、目がクリクリしてかわいく撮れることもある。ロロはモノクロで撮るといいんですよ。あとiPhoneの目覚ましの曲に合わせて、オギーの曲もつくっているんです。夢はその曲を松崎しげるさんに歌って欲しい。って僕、暇なのかな(笑)」

—犬猫以外にハマっていることは?

「ミスチルとかサザンのDVDをみることかな。最近、あんまりそういうメジャーなモノを好きというのはよくないよって、ある人に言われたんです。でも、それって違うんじゃないかなって。メジャーはメジャーになるだけの、何か大きな理由がある。そのメカニズムに興味があって研究という意味も含めて見たりします。昔はそれこそ、オシャレな外国の映画とか音楽に憧れて、ゴダールとか観る訳ですよね。でも観ていると、どうしても眠くなってしまう(笑)。でも何か違う。メジャーの強さの方がおもしろいぞって最近はすごく思うんです。サービス精神の違いというか。僕もモノをつくっていて、どれくらい伝わっているかわかりませんが、サービスの構造を理解した上でやることが大事だと思っていて。殻にこもって自分だけよければいいという考えは嫌なんです」

—代官山で開催した「続・キギ展」は、gggの「キギ展」とは異なりアートディレクターの仕事を超えた世界を表現していました。そういう意味でも、サービス精神が旺盛なのかなと思います。

「クライアントワークは、ものすごく制限があるんです。その制限をいかにクリアしていい仕事をするということも面白いのですが、デザイナーというのは実際に形になる前にたくさんのアイデアを出している。その理想ともいえるアイデアは本当に面白いんですよ。デザインする前段階のイメージの世界をみせたいという、純粋な思いでやっています。アート作品といえるかはわかりませんが、僕たちの頭の中をみてもらいたいんです」

—作品集「KIGI キギ」に掲載されているインタビューで、渡邉さんは内向的で植原さんは外に向かっているということが書いてあったのですが、ふたりのバランスが表現媒体の幅にも繋がっているように思います。

「良重さんはアーティスト肌なので、自分の中で納得いくものをつくるタイプ。僕はどちらかというと、鏡に照らさないと自分を見いだせない。だから、コンディションを計る意味でも自分を誰かの鏡に映すし、多くの人と対話がしたいからいろんな仕事をしたい。そのバランスが、いまちょうどいいのかもしれないですね」

—その外向きな感じは犬っぽいですよね。渡邉さんのほうが猫らしい。

「そうですね。僕は根本的には臆病。でも、良重さんは強い。自分さえあればいい。それはすごいことですよね。僕はいつも“僕、いまどうなっている?”ってキョロキョロしている。そう考えるとまさに犬タイプ。女々しいのかも。ロロと一緒だなあ(笑)。犬の気持ちがわかってしまうから、どちらかというと猫と一緒にいると楽かも。だから一生、猫とは離れられないですね」

  • 名前: オギー
  • 年齢: 8歳
  • 性別:
  • 品種: スコティッシュフォールド
  • 飼い主プロフィール:
    植原亮輔(うえはら・りょうすけ)
    アートディレクター・1972年生まれ。97年多摩美術大学デザイン科(テキスタイル)卒。DRAFTを経て、2012年1月、渡邉良重氏と共に、株式会社キギを設立。 広告、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン(D-BROS)、ブランドデザイン(THEATRE PRODUCTS、PASS THE BATON、une nana cool、Panasonic i-X etc…)などを手掛ける。www.ki-gi.com