映像作家、ミュージシャン・山口崇司 × ミリ — 猫との自然な暮らし

May 10, 2013 / Interviews

Photo:Shin Suzuki Edit&Text:Madoka Hattori

映像作家として、またバンドd.v.dのメンバーとしても活躍する山口崇司さんは、10歳になる鍵しっぽの雌猫、ミリ・メートルさんと暮らしています。パソコンのデスクトップに器用にのっかるミリさん。猫自身の心地よさを考えながらも、無理せずに猫との暮らしを楽しんでいる山口さんに、猫がいることで得られるモノについて伺いました。

自然な巡り合わせで猫との暮らしがスタート

—ミリ・メートルさんとの出会いは?

「ミリちゃんはもともと、友人の家にもらわれてきた猫でした。すでにその友人は猫を飼っていたのですが、最初にいた猫が病気になってしまい、代わりに預かることになったんです。その猫の体調が戻ったら、友人のもとへ返す予定だったのですが、数ヶ月一緒にいたら、手放せなくなってしまって。実家で猫を飼っていたこともあり、そのまま引き取ることになりました。猫を飼いたいと思ったわけではなく、自然と猫のいる生活になってしまった感じですね」

—どんな性格の猫ですか?

「飼い始めたとき、家を3人でシェアしていたので人には慣れています。でも猫見知りが激しくて、他の猫を預かったりすると大変。以前、別の猫と一緒に暮らしていたことがあるのですが、その猫はミリちゃんよりも大きくて、全然仲良くならなかったですね。10歳なのでだいぶ落ち着いてきましたが、昔は走り回ったり、障子をボロボロにされたことも。またツアーで1ヶ月くらい家をあける時は知り合いに面倒を見てもらうのですが、やはり寂しいみたいで。寂しくなると咥える人形があって、なんてことないなんてことない小さいブタのぬいぐるみなんですが、普段は全く興味がないのに寂しい度が高ければ高いほど、運ぶ場所が玄関に近づいていく。その時は鳴き方も独特です」

—ご飯やトイレのこだわりは?

「ご飯は、特にメーカーを決めずにカリカリが主です。トイレは『ニャンとも清潔トイレ』。砂はいろいろ試した結果、常陸化工のひのきを使っています。ミリは砂に触れたくないみたいで、トイレの縁に立ってエア砂掛けをするんです。キレイ好きなのかもしれません。木の枠の爪とぎはamazonで購入しました」

パソコン周りがお気に入り

—さきほどからミリさんはずっと、パソコンのモニターに乗っていますね。

「基本的にモニターの上か、キーボードとモニターの間にいます。作業をしていると、たまにキーボードを踏まれることも。実はずっとブラウン管のモニターを使っていたのですが、去年壊れてしまってようやく買い替えたんです。乗れなくなってしまってごめんね、と思っていたら、今年になってこの上に乗るようになって(笑)。2つのモニターの高さがずれているのは、ミリちゃんが乗って不安定になって壊れないように。画面を行き来する際には使いにくいんですけど、まあしょうがないですね」

—猫側のリクエストに従順な感じが、まるで恋人に振り回されているようにもみえますが(笑)。山口さんとミリさんとはどういった関係性なのですか?

「ミリちゃんがいかに気持ちよく過ごせるかということを考えるのが楽しいんです。実家にいる犬の散歩をする時も、絶対にリードをたるませるようにしたり……。できるだけ動物にとって、自由な環境をつくってあげたい。そういう意味では、振り回されるのが好きなのかもしれません。冬場は毎日、布団の中で腕枕をしていた、手がしびれて嫌なんですけど我慢しちゃうとか(笑)。僕が飼っているというよりは、僕の家に居てもらっている感じですね」

—人に対してもそういう接し方なのですか?

「いや、どうですかねえ(笑)。人間はもうちょっと自分でできるだろうと思うから、そこまでやらないかな。相手はどう思っているかはわからないですけど。人間への接し方と、猫への接し方は全く逆かも。猫への接し方で、人柄もわかりますよね。犬好きな人は最初からガーッと近づいてくるから、ミリは一瞬で察知して逃げてしまう。やっぱり、猫も人を見ているんですよね」

猫と人との自然な関係

—山口さんのお仕事は映像制作やd.v.d.での活動など多岐に渡っていますが、なかなか表立ってはわかりにくい印象がありますよね。

「就職の時、映像だけでなくインタラクティブもどちらも好きだし、両方捨てられなくてゲーム会社に入社したんです。もともとはCG制作をしていて、それをずっとやっていてもよかったのですが、飽きっぽいんですよね。自分がやりたい、好きなことを組み合わせてやっていくうちに、気がついたらここにいたという感じ。でも、人があまりやっていないことをやろうということは、意識しているかな。あとはチームを組んでやるのも得意ではないので、自分のできる範囲で完結できることをやっていきたいんです」

—チームでなく、自分の心地よい場所で心地よいモノをつくる。むしろ山口さん自身の性格自体は、猫っぽいんですよね。猫をモチーフにした作品を制作したことは?

「今、SUNDAY ISSUEで開催されている猫イベント『SUNDAY Cat’s ISSUE』のムービー( http://vimeo.com/63891443 )を制作しました。以前、ゲーム会社に在籍していた時、クマのキャラクターを使ったムービーを制作したことはあります。でも猫のキャラクターは作ったことは無いですね。猫を作るとなると、きっとこだわりすぎてなかなか完成しないと思います」

—猫をモチーフにするのはちょっと抵抗があるのですか?

「自分から猫を出そうとは思ったことはないですね。企画の段階でも、なかなか発想しないかな。ミリちゃんがいるから、猫に対しては満足しているんですよ。猫に対する愛情やモチベーションを、外にアピールする必要がないのかもしれません」

—では最後に、猫と一緒に暮らすことで得られるモノとは?

「寂しいときに、この子だけは絶対いてくれるよね、という安心感ですかね。基本的に家で仕事をしているので、ほとんどミリちゃんとしか会話していないし(笑)。でもそもそも、猫を飼いたいと思って暮らしはじめたわけではなくて、自然と側にいる関係になった。猫がいることで不自由だと思ったことはないし、僕の生活に猫が自然といるだけです」

  • 名前: ミリ・メートル
  • 年齢: 10歳
  • 性別:
  • 品種: 雑種
  • 飼い主プロフィール:
    山口崇司(やまぐち・たかし)
    映像作家、ミュージシャン。プログラミングを絡めた映像、メディアアート、MV、ライブ映像制作等を行う。SIGGRAPH、Ars Electronica他での受賞など、国内外で評価を得る。2006年よりツインドラム+インタラクティブ映像の変則トリオ『d.v.d』を始動。以降、新ユニット『やくしまるえつことd.v.d』や『DEDE MOUSE+TakashiYamaguchi』などで活動中。
    http://www.takashiyamaguchi.com