漫画家・伊藤潤二、絵描き・石黒亜矢子 × てんまる&とんいち — 描きたくなる猫たち‬‬

Oct 22, 2013 / Interviews

photo:Takeshi Shinto edit&text:Madoka Hattori

ホラー漫画家の伊藤潤二さんが猫と暮らすことになった日々を描いた漫画『よん&むー』。著者である伊藤潤二さんと、漫画にも登場する猫好きの妻で絵描きの石黒亜矢子さん。よん&むーとの暮らしを経て、現在はユニークな柄を持つてんまる&とんいちの2匹と暮らしています。猫に対する独特の視点を持つお二人に、猫を描くことの面白さについて伺いました。‬‬


〈とんいち〉

猫は未知の生き物!?‬‬

‪‪—漫画『よん&むー』は、ilove.cat編集部の中でも一番人気の猫をモチーフにした作品のひとつです。最初に取材させていただいた今日マチ子さんに教えていただいたのですが、単なる猫エッセイとは一線を画す視点が非常に面白いなと。お二人の猫との関わりは?‬‬

‪‪伊藤潤二「僕はハムスターや犬などは飼ったことがあったのですが、猫は全く接したことがなかったんです。猫に対しては、友人が野良猫にご飯をあげていたのですが手に引っ掻き傷がたくさんあったり、街角で睨みつけられたりと、ちょっと怖いなという印象でした。何を考えているかわからず、未知の世界でしたね」‬‬

‪‪石黒亜矢子「私は昔から猫が大好きで、高校生くらいから猫と暮らしてきました。次郎という猫を飼っていたのですが、ある日腎不全で突然亡くなってしまって。その後に里親募集サイトでみつけたのが『よん&むー』に登場する白黒柄のよんすけでした。むーは、友人がノルウェージャン・フォレストキャットを飼っていて、兄弟の貰い手がいないと聞いて、家にくることになったんです。伊藤はむーにメロメロでしたよね(笑)」

‪‪伊藤「撫でると喜ぶんですよ。それが可愛くて(笑)」‬‬


〈てんまる〉

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―漫画では、猫好きな石黒さんと、猫に振り回される伊藤さんという構図が、対照的に描かれていました。なおかつ猫との接し方がリアルで、猫を飼っている人なら思わずあるある!とうなずくようなシーンもありました。‬‬

‪‪伊藤「漫画はやや大げさに描いていますが、実際に起きたエピソードを元にしています。そもそも猫漫画を描こうと思っていたわけではなく、よんすけが脱走したり、いろいろ事件を起こしていくうちに、これは漫画に描いたら面白いかなと思いはじめたんです」‬‬

‪‪石黒「えっ、脱走した時、すごく大変だったのに、そんな呑気なことを考えていたの!?」‬‬

‪‪伊藤「いやいや、後からネタになるなと思ったんですよ。よんすけは、桃屋のモデルになったコメディアンの三木のり平みたいな面白い顔をしていました。本当に面白い猫だったので、機会があればと思っていたら、ある編集者さんから声をかけていただき、漫画にすることになったんです。僕は猫に馴れていないせいもあり、カミさんに懐いているところをギャグにして構成しました」‬‬

‪‪石黒「よんすけもむーも、わりと気前がよい猫で、誰にでも懐いていました。それに比べて、てんまるは臆病ですね。よんすけは千葉に引っ越しをしてから、心臓発作で突然死でした。引っ越しが原因かわからないのですが……。むーは今、実家にいます。一度、実家に預けてから両親に懐いてしまって、そのまま優雅に暮らしています」

‪‪ーてんまるさん&とんいちさんとの出会いは?‬‬

‪‪石黒「よんすけが亡くなり、むーが実家にいってしまってから、やはりまた猫と暮らしたくなって、あらたに探し始めました。うちには子どもが2人いるので、大人の猫だとストレスかなと思い、子猫を貰い受けることにしたんです。てんまるは保護猫で、3ヶ月くらいで家にやってきました。最初は全く出てこなかったんですが、子どもたちと一緒に寝ていましたね。自分も子どもだと思っているのかもしれません。とんいちは、同じ里親募集サイトで見つけました。てんまるが3歳になったので、2匹飼うならそろそろかなと。そこで今年の7月にとんいちとトライヤルをしてみたら、すぐに仲良くなって飼うことになりました」‬‬

‪‪猫の奇妙な姿を描く‬‬

‪‪石黒「よんすけは、私が独身の頃から飼っていたので異様に入れこんでいたんです。また伊藤はむーに夢中でした。てんまるととんいちには自分の子供と同じように、接しています。‬‬ てんまるは、よんすけと同じ頭のよいヒトみたいな猫。とんいちはまだまだ子猫なので、ヤンチャでこれからどういう猫になっていくかわかりません」

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—てんまるさん&とんいちさんは、ブチ柄がとても個性的ですよね。‬‬

‪‪石黒「てんまるの模様を見た時は、衝撃でした。他の兄弟はキジ虎やきれいなブチ柄だったのですが、この子は誰も引き取り手がつかない! 私が連れて帰ってあげなくては! と思ったんです。こんな柄ですが、病気という訳ではないし、勝手な思い込みなんですけどね(笑)」

‪‪伊藤「彼女は妖怪を描いているので、変わったのが好きなんですよ。とんいちも最初は尻尾がもっと尖っていて、とかげみたいでした」‬‬

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—猫を描く時に、気をつけているポイントはありますか?‬‬

‪‪伊藤「いつも、カミさんが撮った写真を参考にしながら描いていました。観察していると猫は思っている以上に、前足の腕が長いなとか。犬の漫画を描いたことはあった のですが、猫を描き出してからも犬みたいになってしまうんですよね。特に鼻が難しい。犬は鼻が前に出ていますが、猫はストンと落ちていますよね。また首か ら肩にかけてのなだらかな猫背の部分が好きで、そのシルエットは意識していました。またむーは可愛く、よんすけはひょうきんに。実物よりも少しデフォルメして、キャラクターに差をつけて描いていましたね」‬‬

‪‪石黒「私はもともと歌川国芳が好きで、国芳の描く日本猫で筋肉質な姿に憧れていたんです。よんすけも、そういうタイプでした。11月1日から東京・ビリケンギャラリーで『化け猫展』を開催します。こういってしまうとアレですが、伊藤ほど絵が上手くないので、猫を描くにもデフォルメしてしまうんですよね。絵本『おおきいねことちいさいねこ』は、イソップ寓話をテーマにしたお話で、主に猫でなければならない話ではありませんでした。今回の『化け猫展』では、初めて完全に猫をテーマにしています。尻尾が二股の化け猫=猫又で、あんまり可愛くない猫たちばかり。愛らしい猫を期待している猫好きの人は、びっくりしてしまうかもしれませんが(笑)。猫画、化け猫画といえば国芳。もちろん猫だけでなく、狸や金魚などたくさんんの動物を擬人化して描いていますが、彼の猫絵には、正直、到底かなわない。国芳へのオマージュとして、開き直って、一生懸命描いています」


「化け猫展」

  • 名前: てんまる、とんいち‬‬
  • 年齢: 3歳、1歳‬‬
  • 性別: 雄、雄‬‬
  • 品種: 雑種、雑種
  • 飼い主プロフィール:
    伊藤潤二(いとう・じゅんじ)‬‬
    ‪‪1963 年生まれ。歯科技工所で働きながらホラーマンガ家を目指す。1986年『富江』(朝日ソノラマ)でデビュー。しばらく技工士とマンガ家の2足のわらじで活 動するが、90年に退職し専業マンガ家に。98年、ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて、幻想ホラー『うずまき』の連載を開始。9年には『富江』が菅 野美穂主演で映画化。代表作にゲーム『サイレン』に影響を与えた『サイレンの村』(朝日ソノラマ)、『闇の声』(朝日新聞出版)など。‬‬

    ‪‪石黒亜矢子(いしぐろ・あやこ)‬‬
    ‪‪1973 年生まれ。絵描き。著書に『平成版 物の怪図録』(マガジンハウス)、『おおきいねことちいさいねこ』(長崎出版)など。2013年11月1日(金)~11月10日(日)「石黒亜矢子 化け 猫展」@ビリケンギャラリーが開催予定。‬‬
    ‪‪http://ishiguroayako.tumblr.com‬‬
    ‪‪https://twitter.com/ishiguroayako/