お菓子クリエイター・cineca × テト — ひねりの効いた猫クッキー

May 23, 2014 / Interviews

Photo:Kazuho Maruo Edit&Text:Madoka Hattori

ilove.cat祭りや渋谷パルコ、手紙社「GOOD FOOD MARKET」「東京蚤の市」などのイベントでお菓子を制作・販売しているcineca(チネカ)さん。Snapshotsにも登場する愛猫・テトさんと暮らしています。猫のご飯をモチーフにしたクッキー『kalikali』や『ゆる猫クッキー』など、猫がテーマになっているお菓子も大好評。愛する猫と映画、そしてお菓子づくりについて伺いました。

愛猫の生まれ変わり!?

—テトさんとの出会いは?

「昔から母とよく通っている千葉の館山にあるダイビングショップに、ダンボールに入れて捨てられていたんです。お店の方がダンボールを開けると、パッと肩に乗ってきて。まさに、『風の谷のナウシカ』のテトみたいだったんですよ。まだ3週間くらいの小ささで、ダンボールには数字で4649(ヨロシク)って書いてありました。あまりにも無責任だし、ありえないですよね。しばらくそのお店で預かって里親募集していたのですが、実はテトが捨てられた日が、実家で飼っていた猫の命日だったんです。それで、母がこれは生まれ変わりかも、だからあなたが飼いなさいって。実家には別の猫がいるので、何かあった時には面倒をみるからと後押しされて、うちで引き取ることにしました」

—昔から猫を飼っていたんですか?

「実家では、多い時で3匹と暮らしていました。だから猫がいて当たり前。その亡くなった猫は大吉っていう名前だったんですけど、性格も面白くて家族みんなに愛されていました。でも亡くなってからみんな落ち込んでしまったんです。ちょうど1年後にテトに出会ったので、しかも顔もちょっと似ていて。今となれば性格も似ているし、本当に生まれ変わりだったのかなって思っています」

—テトさんはどんな性格ですか?

「やんちゃで食いしん坊。男の子っぽいですね。でも繊細な面もある。例えば床にクッキーの食べカスが落ちていたら、砂かきをするんです。食べるわけでもなく、いつもと違うモノがあると砂かきしていて。きれい好きというか、潔癖なのかもしれません。トイレも掃除していないと、ずっとトイレの前にいて砂かきしながら“片付いてないよ”ってアピールしてきます」

—撮影中もずっと遊んでいますね。

「遊ぶのは大好きで、いつまででも遊んでいるんですよ。猫も飽きてしまったり、疲れてくるじゃないですか、でもテトは永遠に遊んでいられる。人間のほうが疲れてしまうんですよね。先日、ネコ研究をされている東大の斉藤先生に、テトがベンガルにちょっと似ていると言われたんですけど、ベンガルは行動的らしいので、その血がちょっと入っているのかもしれません。大きな病気などはしたことないんですけど、この間お腹にハゲがあると思ってあわてて病院に連れていったらヘソでした。ヘソがあるなんて知らなかったのでビックリしました(笑)」

—テトさんはお手ができるとか。

「そうなんです、頭がいいんですよ。ご飯をあげる時には、お手をします。実家に預けた時に、取っ手に体重をかけて扉をあける方法を習得したらしく、今では家でも開けられるようになりました。どんこの家にも預けたことがあるのですが、まだ小さかったので他の猫が好きで、遊びたくて追いかけていたみたいです。どんこは穏やかな性格だから、大丈夫でしたが、一緒にいたうずらという猫には嫌われていましたけど」

—テトさんとcinecaさんの関係は?

「親子ですかね。実家にいた猫たちとは全く関係性が違います。とはいえ、テトは猫。人間とは違うし、この猫は自分を人間だって思っているのよ、って人もいますが、あまりそういう感覚はないですね。寝るときもベッドに入ってきてしまうので、テト用のテントを買って、ここで寝るんだよって教えたんですけど、そういうところは言うことを聞いてくれないですね(笑)。人が好きで、愛嬌があるというか人懐っこいんです」

猫をテーマにしたお菓子づくり

—ilove.cat祭りでも大好評だったお菓子『kalikali』はどのようにしてできたのですか?

「ちょうどcinecaを立ち上げるタイミングで、ilove.cat祭りで猫のお菓子を販売しないかという依頼をもらったんです。私はいつも映画を見ていて、家にいてもずっと映画のDVDを流しています。年間500本くらい見ているので、自分でもちょっと見過ぎかなって思うくらい(笑)。なかでもフランシス・ヴェベール監督の『メルシィ! 人生』って映画が大好きで、その主人公が子猫を拾うんです。猫がきっかけとなり、彼の人生が開かれていくという物語。映画の中では、子猫がミルクを飲んでいるシーンがあるのですが、きっと今はもう成長してミルクは飲んでいなくてカリカリを食べているんだろうなって想像した時に、猫のカリカリって面白いなって。カリカリって共通語があること自体も、犬にはないし、猫ならではの独特の文化ですよね。cinecaは映画をテーマにしたお菓子ブランドというコンセプトなので、その映画からヒントを得て『kalikali』をつくりことにしました」

—猫を飼っている人なら誰でも、愛猫がカリカリを美味しそうに食べているのを見ていると、ちょっと食べてみたいなって思いますよね。『kalikali』は、その心理をよくついているなと。

「実は、小粒のクッキーってつくるのがすごく難しいんです。1点1点型抜きでつくっていて、クッキーは小さければ小さいほど、同じ大きさでないと火の通りが変わってしまうので、型抜きの工程でもかなり気を使わなければいけません。また焼き加減も、普通のクッキーは“サクサクッ”とした食感ですが、猫がカリカリを食べる時のような“カリカリッ”という音を出すため、ちょっと固めにしています」

—『kalilali』だけでなく、cinecaさんお菓子はストーリーや食べる人の楽しみまで考えられていますよね。

「私はただカワイイものっていうのは好きじゃなくて、少しひねってあってアイデアがあるもの。だから、スマートな表現として『kalikali』はとても気に入っています。でもいいモノができた後に、つづけて自分が納得がいくものをつくるのは、ハードルがどんどん高くなるのでとても苦しい作業ですよね。だから『kalikali』の後、次の商品のアイデアが固まるまで、とても時間がかかりました」

昨年のilove.cat祭りではあらたな猫お菓子『ゆる猫クッキー』が大好評で、すぐに完売してしまいましたよね。

「『kalikali』はアイデアがあって面白いのですが、イベントなどでは華やかさに欠けるなって思っていて。パッと見でキャッチーなモノのほうが購買意欲に結びつくので、ひと目で猫とわかるお菓子がつくれないかなと考えていました。以前、デザイン事務所で働いていた時にボスから、脳のトレーニングとして何かモノをみたら“〇〇みたい”という連想をする訓練をするように言われてやっていたんです。あの人は鯖みたい、あの人は椅子みたいとか。頭の体操みたいなものですが、けっこう楽しくって。お菓子づくりのときも、アーモンドって猫の目みたいだなとか、半分に割ったときは鼻に似ているな、パンプキンナッツは耳の中の形みたいと思っていて、この発想から『ゆる猫クッキー』が生まれました。アイシングなどは絵を描く技術と同じなので、ひとつの表現としてはありですが、もっとお菓子にしかできないことというか素材を活かしたクッキーができないかなと思ってつくったんです」

—cinecaのお菓子は、猫モチーフだけなく、石のようなラムネやガラス細工のようなお花のキャンディ、絵の具のパレットそのままのクッキーなど、ビジュアル的にもユニークなモノが多いですよね。

「お菓子づくりは、絵を描くよりも上手く表現ができるんです。美大では空間やランドスケープを専攻していましたが、グラフィックのほうが向いているかもと思い、卒業後はデザイン事務所で働いていました。もともとお菓子作りが得意だったこともあったのですが、仕事をしているうちにふと、自分の頭のなかにあるイメージや創作力をお菓子作りでのほうが100%に近いかたちで表現できるかもと思うようになって、製菓学校に通い、cinecaを立ち上げました。だから普通のお菓子ブランドとはちょっと違うって思ってもらえるのかも。最近では渋谷パルコの『PARTY SALE』でケータリングをやらせてもらったりと、イベンドなどに呼ばれることも多いのですが、これだけたくさんお菓子がある中でcinecaを選んでくださることは、とても嬉しいです」

—お菓子だけでなく、猫モノにもこだわりが?

「単にカワイイものって簡単につくれてしまうから、安易だなって思います。猫グッズもそうですが、やっぱりひねりが効いていたり、手にとったひとに考えてもらう要素が必要。直接的な猫のシルエットや肉球とかでなく、『kalikali』から猫の存在を意識したり。そういうアイデアのあるものをこれからも作っていきたいですね」

  • 名前: テト
  • 年齢: 2歳半
  • 性別:
  • 品種: 雑種
  • 飼い主プロフィール:
    cineca(チネカ)
    映画を題材に、あたらしいものがたりを発想してつくるお菓子ブランド。
    2007年多摩美術大学卒業。カフェやイベントなどでお菓子の卸し、出店販売をしている。主な活動としては、ilove.cat祭り、手紙社「GOOD FOOD MARKET」、「東京蚤の市」「太陽と星空のサーカス」「rooms27」などでのお菓子販売、出店。渋谷パルコ 40周年バースデーナイトパーティ、シブカル祭でのケータリングなど。現在、渋谷PARCO part1 RECTOHALL SHIBUYAにてお菓子“herbarium”の取り扱い、一年のうち春と秋の二季にわけて東京、駒込にある“旧古河邸”喫茶室にてお菓子“stone.”を提供中。
    http://cineca.si