カイカイキキ ペインティングスタジオ総監督・シショウ×ビビ — アートに囲まれて暮らす猫

Apr 4, 2011 / Interviews

Photo: Shin Suzuki / Edit&Text: Madoka Hattori

現代美術作家・村上隆さん率いる『カイカイキキ』。そのカイカイキキの三芳ペインティングスタジオ 絵画制作総監督のシショウさんと愛猫ビビさんを、ビビさんの遊び場(?)である三芳スタジオで撮影。黙々と作業をする制作スタッフを横目に、元気にスタジオ内を駆け回るビビさん。さらには、ビビさんのことが大好きな村上さんの愛犬POMさんも登場します。

美しいプロポーションと人なつっこさが魅力のアビシニアン

—ビビさんとの出会いは?


「僕は社内でも有名な猫好きで、いつか猫を飼いたいと思っていたんです。スタジオの近くに部屋を探した時も“ペット可”というのが条件のひとつでした。飼うことを決意してからは、どの種類の猫にするか、リサーチをしました。猫カフェに行って実際に見たり、同じ猫好きのスタッフに相談したり。それでアビシニアンがいいなとなって、スタジオ前の大型スーパー内にあるペットショップにお願いして、アビシニアンを探してもらいました。ちょうど秋田のブリーダーさんの所でアビシニアンの赤ちゃんが産まれたと連絡があり、タイミングよく譲り受けることができました」

—色んな猫をリサーチした上で、アビシニアンに決めた理由は?


「まず単純に見た目です。賢そうで、すました感じがある一方、懐っこそうだったり。調べてみるとアビシニアンは “犬っぽい猫”と書いてあり、呼んだら返事をするとか…意思の疎通ができる感じがいいなと。三毛猫とか日本猫も好きですが、アビシニアンは体型がモデルさんみたいにスラッとしていて、とても美しい。やっぱり選んだ理由は見た目の美しさです」

—実際、ビビさんに会った印象はどうでしたか?


「生後2ヶ月でしたが、衝撃的なかわいさでした。子猫だし(笑)。目がすごく大きかったので、ペットショップの人も“絶対可愛くなる”と太鼓判だったんです。ビビという名前は特に意味はないんですけど、アビシニアンから“ビ”をとって、響きで名付けました」

—以前にも猫を飼っていたことはあるのですか?


「昔、実家でシャム猫(見た目はシャムですが三毛猫とシャムのミックス)を飼っていました。16歳まで生きたので、かなり長生きしましたね。とても利口な猫だったんです。ビビもペットショップから引き取った時には、すでにトイレも覚えていたのでしつけは楽でした。あまり鳴かないですし、飼いやすい方だと思います」

—ビビさんは、おもちゃやごはんのこだわりはありますか?


「ヒモの先に玉がついたおもちゃが大好きで、毎晩これで遊びます。猫トンネルもお気に入り。冬場は猫用のホットカーペットをつけています。ごはんはロイヤルカナンのカリカリが中心。1歳を過ぎたときに子猫用から1歳以上の室内猫用にごはんを変えたのですが、合わなかったらしく、あごの下辺りにハゲが出来てしまったんです。医者にはアレルギーの可能性があると言われました。餌を子猫用に戻してから、症状は治まったのですが、完治するまで3ヶ月くらいがかかりましたね。かわいそうなことをしました」

—ビビちゃんと暮らし始めて、生活に変化はありましたか?


「家に帰るようになりました。当たり前なんですが(笑)。以前はよくスタジオに泊まっていたのですが、今はどんなに夜中遅くなっても帰るようにしています。僕は毎日6時に起きて、7時にスタジオへ行き、だいたい夜中まで仕事をしています。その間、ビビはずっとひとりで家にいるので、仕事で疲れていても、帰ったら必ず遊んであげます。たぶん昼間に寝ているので、夜はものすごく元気に走り回って、なかなか寝かせてくれません。寝不足です(笑)」

POMとビビ。犬猿ならぬ、犬猫の仲!?

—カイカイキキのスタジオには村上隆さんの愛犬POMさんが居ます。ビビさんも、スタジオによく連れて来るのですか?


「月に1〜2回くらいです。人見知りしないのですが、抱っこはあまり好きじゃないですね。スタジオでは勝手に歩き回って探検しています。POMのケージを間借りしていますが、ぴょんと登ってすぐに脱出して、事務所では机を渡り歩いてます。自宅と違って広いですし、遊ぶ所が沢山あって楽しそうですね。最初はパネルで爪研ぎをしないか? とか色々心配していたのですが、いまのところ悪さはしていないです」

—POMさんを飼う時はどうでしたか?


「僕はずっと猫派だったので、スタジオで犬を飼うという話が出たときは正直、反対派でした。“無理だろ!”って(笑)。でも、村上さんがつれてきたPOMを見て、コロッと寝返りましたね。とはいえ、犬を飼ったことのあるスタッフが誰もいなかったので、飼い方のマニュアル本を買ったり、ネットで調べたり。それからスタッフ皆で、しつけ方をドッグトレーナーに教わったり。こういうのは猫にはできないので新鮮でした」

—POMさんとビビさんは仲がいいのですか?


「基本的に仲はいいのですが、POMがガンガン追いかけてくるので、だいたいビビが逃げ回ってますね。POMはビビのことがすごく好きみたいで、しっぽをぶんぶん振っていますけど、ビビのしっぽはネコジャラシみたいに逆立ってますよ(笑)」

—犬と猫の両方を見て、違いを感じますか?


「感情表現の違いはとても面白いです。猫はストレスを感じるとしっぽを振りますが、犬は反対にごきげん。猫の方が表情は豊かに感じますね。喜怒哀楽の種類ではなく、表現方法というか動きの表現が豊か。僕の犬歴が短いので、もう少し触れ合うと色々読み取れるようになるのかもしれませんが。犬と猫の大きな違いは、猫はわがまま。呼んでも来ないし、言うことを聞かないじゃないですか。昼間はそっぽを向いているのに、夜になるとデレデレ甘えてきたり。そういうツンデレな性格が好きですね」

猫と美術家の親和性

—お気に入りの猫グッズや本・漫画などありますか?


「猫を飼えなかった時期は、猫雑誌なんかをよく眺めてました。漫画だと『天才柳沢教授の生活』の猫が出てくるエピソードだけを集めた単行本『天才柳沢教授 タマとの生活』がお気に入りです。あとは猫の出てくるDVDを買ったり、YOUTUBEにアップされた猫動画を見て和んでました。GEISAIで見つけた猫の絵もお気に入りです。若手の作家さんの作品で、一目見て気に入りました。ですが、ブースに作家さんが全然いなくて。誰かに買われないように2時間くらい絵の前でウロウロしました(笑)。ピンクの猫が可愛くて、すごく気に入っています」

—アンディ・ウォーホルや藤田嗣治など、猫は昔から美術家に愛され、作品にも多く登場します。村上隆さんの作品にも、POMさんが登場しますよね。


「ある日突然、村上さんは作品の自画像の横に犬のキャラクターを並べたんですよ。それはPOMがやってくるよりも前でした。POMを飼う前から、犬と自分が並んだスケッチを描いていたんです。何か、必然性があったのかもしれませんね。POMが来たと同時に、POMにそっくりな犬の立体作品が仕上がってきたので、若いスタッフはみんな驚いてました」

—三芳スタジオでは、カブトムシやクワガタ、メダカ、サボテンなど、様々な動・植物を育てています。生き物を飼うことで、制作に影響を与えるのでしょうか。


「生き物と暮らすこと、普段の生活や作品制作の中に“自然があること”はとても大切です。カイカイキキも以前は埼玉県朝霞市の荒川のそばが活動の拠点でした。いま、昔の制作の様子を思い返してみると、自然の様子が一緒になって記憶されていて、空の様子とか季節感が制作の記憶と一緒になって思い出されます。僕は冬が嫌いで、夏が来るとワクワクしてくるのですが、そうした気分みたいなもの、動物的な部分もやっぱり大事な気がします。なので、植物や犬、猫などを飼う行為は、自然を身近に置くという意味で、もしかしたら必然的なことなのかもしれません。ビビやPOMを見るときは単にかわいいと思うばかりですけど(笑)。猫に関しては、付き合いは長いつもりなのですが、それでもいまだに謎多き生き物です。何をするか想像がつかないし、見たことのないポージングをしていたり。その愛嬌には、日々、驚きと発見があります。明確なものはないですが、何かしら制作にも影響があるかもしれませんね。ビビはまだ、1歳とちょっとの子供なので、毎日はしゃぎ回っていますが、これから一緒に生活していくと、だんだんお互いの空気ができてくる。昔飼っていた猫もそうでしたが、ビビとも、あ・うんの呼吸でお互いの気持ちが理解できたりするようになると思います。今のところは疲れて帰っても“遊んでくれ!”と飛びついてきて、気を遣ってくれることはないですけどね(笑)」

  • 名前: ビビ
  • 年齢: 1歳3ヶ月
  • 性別:
  • 品種: アビシニアン
  • 飼い主プロフィール:
    シショウ
    「カイカイキキ」ペインティングスタジオ総監督。1998年、埼玉県朝霧にあったヒロポンファクトリー(現カイカイキキ)にて、ボランティアスタッフとして働き始める。以降、何度も逃げ回りながら(!?)現在に至る。現在は、埼玉県にある三芳スタジオとNYスタジオにて村上隆さんの新作絵画を制作中。 twitter: shishovivi http://www.kaikaikiki.co.jp/