彫刻家・三沢厚彦 × くう — 野生を感じる猫という存在

Jan 24, 2014 / Interviews

Photo:Kazuho Maruo Edit&Text:Madoka Hattori

ゾウやライオン、ウサギなどの動物をモチーフとした「アニマルズ」シリーズの木彫で知られる彫刻家・三沢厚彦さんは、13歳になる黒愛・くうさんと暮らしています。ユーモア溢れる表情をした原寸大の動物の中でも、猫をモチーフにすることもある三沢さん。動物に対してどのように接しているのか。黒猫との暮らしを伺いました。

ゴミ箱置き場の横でみつけた子猫

—くうさんとの出会いは?

「芸大に非常勤講師として通っていた頃、上野公園でゴミ置き場でブルーシートに包まれやせ細った子猫をみつけたんです。一度通りすぎたのですが、気になり戻ってみたら、かなり弱っていたので駄目かもしれないと思いながら自分の研究室に連れて帰りました。妻も猫が好きだったので、結局自宅に連れて帰り飼うことになったんです」

ーどんな性格ですか?

「ものすごく頭がいいんですよ。こちらが言っていることも多分理解しているし、お手とおかわりもできます。連れてきたときはノミがすごくて、病院に通っていましたが、完治してからは大きな病気もなく健康です。また動きも活発で、まるで猿のように方にポーンと飛んだりするんですよ」

野生を感じる猫の存在

ーくうさんと出会った頃、すでに「アニマルズ」シリーズはスタートしていたのですか?

「ちょうど動物をモチーフにし始めた頃だったと思います。ゾウやライオンなどに比べ、犬と猫は人間ととても近いですよね。人間と暮らしてきた歴史もある。とはいえ猫はたまに凶暴になるときがあって、野生を残していると感じます」

ーくうさんをモチーフに制作したことは?

「スケッチは描いたことがあるのですが、木彫はまだ作っていません。やはり、ホンモノが居るので……。猫は先っぽの神経の入り方がすごいですよね。鼻先から耳先、指先、尻尾の先まで、向きや方向性・リズムが完璧です。先端のカタチが、猫らしさを決めていると思います。また、真っ黒な生き物ってあまりいないですよね。クロヒョウくらいでしょう。アースカラーや模様がある生き物がほとんど。そんな中で真っ黒な黒猫は不思議な存在だと思います」

ーご自宅には招き猫やリサ・ラーソンの陶器など、猫の置き物がたくさんありますね。

「リサーチというよりは、ただの物欲です(笑)。もちろん、好みはあるのですが、見つけるとコレクションしたくなってしまうんですよね。イラストっぽいモノやキャラクターよりは、猫のフォルムや仕草を表現しているモノが好きです。リサ・ラーソンは形式化されていますが、陶器の素材を理解して型取りしやすいフォルムになっている。九谷焼の招き猫も、猫の丸みが出ていて上手いなと思います」

ー猫はほかの動物と比べて、作りやすいのですか?

「フォルムの許容範囲が広いので、ちょっと手が短かったり、胴が長かったりしてもなんとかカタチになるんですよね。あえて尻尾を長くすることもあります。僕にとって猫は定番モチーフ。力を抜いていたら、気づくと猫を作っているんです」

ー周りには猫好きな人が多いのですか?

「犬好きな人のほうが多いかもしれません。猫好きな人は、猫の話をし出すと、人の話を聞かないですよね(笑)。聞いているようで、気づけば自分の猫がいかに賢いかという話をしている。共通の話題で盛り上がるから楽しいんですけどね」

ー猫の魅力とは?

「猫自体は、従順なようで、マイペース。しかも寂しがり屋。ゴム鞠のように丸くなれば、ビヨーンと伸びたり。形のキャパシティが広い。犬は筋肉質なのでそこまで変化しないですよね。猫はとてもしなやか。歩き方から寝ている姿まで、いつみても新鮮だなと思います」

  • 名前: くう
  • 年齢: 13歳
  • 性別:
  • 品種: 雑種
  • 飼い主プロフィール:
    三沢厚彦(みさわ・あつひこ)
    1961年、京都生まれ。彫刻家。
東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。武蔵野美術大学特任教授。2007年より、全国8ヶ所の公立美術館で「三沢厚彦ANIMALS」展を開催。2010年、あいちトリエンナーレにて「Animals and the Mountain」を出品。作品集に『三沢厚彦 アニマルズ』、『ANIMALS+』(ともに求龍堂)、絵本『動物たち』(理論社)、『しっぽしっぽ』(福音館書店)、『Painting of Animals』(青幻社)などがある。